2005年11月20日

ディエップ上陸作戦

(チャーチル戦車)
チャーチル.bmp
皆さんはノルマンディー上陸以前に連合軍のフランス上陸作戦があったことをご存知だろうか。実は1941年の8月に、イギリス・カナダ軍の連隊、約5000名がフランスのディエップに上陸を行っていたのである。それが今回のタイトル「ディエップ上陸作戦」なのである。この記事ではその作戦の全貌を紹介したいと思う。

バトル・オブ・ブリテン」からほぼ一年が経過し、ドイツの矛先が東のソ連に向いていた1941年夏、イギリス軍は初戦の敗退から息を吹き返し、アメリカの支援を受けて戦力を充実させつつあった。そこでイギリス軍司令部はドイツの隙を突いてフランスに上陸し、威力偵察をおこうなおうと企てた。偵察といっても連隊規模で約5000名の兵力を動員し、あわよくば町のひとつふたつ占領し、ドイツ軍に揺さぶりをかけようという狙いもあった。もちろん上陸軍は、敵の本格的な反撃が行われる前に撤収し、イギリスに戻るという計画であった。

ドイツが広く宣伝した「大西洋の壁」の構築はまだまだ進んでいず、ヒトラースターリンとの喧嘩に夢中になっている今、この強引な上陸作戦はうまくいくだろうとイギリス軍司令部は楽観視していた。

イギリス軍はこの作戦に新兵器を投入した。それは当時のイギリス首相の名を冠した「チャーチル戦車」(写真参照)である。その名前の由来は、チャーチルがこの戦車をいたく気に入り、陸軍司令部の反対を押し切って採用したことにある。チャーチル戦車は防御力が高く、火力も当時の水準に達していたが、重量が重すぎ、機動力が極度に低い戦車であった。このチャーチル戦車には、数メートルの潜水が可能な改造が施された。上陸地点の手前から船を離れることができ、迅速な上陸支援と、生存率の向上が期待された。

1941年8月19日、ディエップ上陸作戦は実行された。上陸に際してのドイツ軍の反撃はほとんどなかったが、海岸に仕掛けられたドイツ軍の罠が、チャーチル戦車の前進を妨害した。チャーチル戦車は、海岸に掘られたドイツ軍の対戦車壕にはまり身動きが取れなくなってしまったのである。その大重量のため、砂地にはまり込んでしまった車両まである。さらに、潜水装置がうまく作動せず、海に潜ったはいいがそのまま水没してしまった悲惨な車両もあった

戦車を含む重火器は海岸で身動きがとれずなかなか前進することができなかった。歩兵のみが前進を開始し最寄の町へ進軍したが、火力支援が皆無だった。一方、連合軍の上陸を察知したドイツ軍は反撃を開始し、軽装の連合軍を再び海岸に追いやった。海岸まで進軍したドイツ軍の戦車・対戦車砲は壕や砂にはまっているチャーチル戦車を狙い撃ちにした。身動きできないチャーチルは海岸に残骸をさらした。

かくして、楽観された上陸作戦は見るも無残な結果に終わった。上陸した英・加連合軍のうち、イギリスに帰ることができたのはわずか数百名にすぎない。ドイツ軍の海岸への急接近により、艦船の接岸による撤収が不可能だったからである。大半の兵士はドイツ軍の捕虜になってしまった。

この作戦で、連合軍はあまりにも大きい代償を支払うことになったが、上陸作戦に対する慢心をなくし、砂浜の突破や潜水改造などの技術的な教訓を得ることができた。一方ドイツ軍は、敵の上陸作戦に対する慢心を抱いてしまったのである。その結果は1944年のノルマンディー上陸作戦で証明されることとなった。
posted by 戦車男 at 23:04| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
戦車男さん、こんばんは。 ディテップ上陸作戦の事は、今回の戦車男さんの記事で初めて知りました。この様な作戦があったなんて知りませんでした。作戦は失敗に終わったみたいですが、これが教訓でノルマンディー上陸作戦の時に工兵車両を大量に動員したんでしょうね?チャーチル戦車の1/72スケールがまだ、作らないで家にありますが、暇見て作ろうと思っています。チャーチル戦車では火炎放射型のチャーチル・クロコダイルが好きです
Posted by 十津川健也 at 2005年11月21日 20:23
十津川さん

こんにちは。コメントありがとうございます!チャーチルはその後、登板能力や超壕能力が改良されて、再びノルマンディー上陸作戦に投入されましが、実は、速力は遅くとも、シャーマンよりも登板能力が高かったそうです。そのおかげか火炎放射型のクロコダイルが作られたり、工兵支援の陣地突破用の特殊車両に改造されたりしたようです。
Posted by 戦車男 at 2005年11月24日 14:56
ディエップ上陸作戦で最も大きな被害を受けたのはカナダ軍(5000人中2200人しか生還していない)だった。
でもカナダ第二歩兵師団師団長J・ハミルトン・ロバーツ少将は作戦開始前に
「ディエップ上陸はケーキの一切れにも似てたやすい」と部下に言っていたそうです。
でもディエップ上陸作戦に大失敗してからというもの、毎年腐りかけのケーキが入った包みが送られてくるようになったそうで。
欧米人の嫌味のセンスを感じますね。
Posted by いしい at 2006年08月15日 13:20
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