2005年10月04日

パンター戦車

PanzerV_Ausf.G_2_sk.jpg
1941年独ソ戦の勃発によりソ連に侵入したドイツ軍は、T34戦車に遭遇した。T34戦車は当時のドイツ軍の主力であったV号戦車W号戦車はるかに凌駕する性能を持っており、それらの戦車ではまったく歯が立たなかった。T34に対しては歩兵の肉薄攻撃や高射砲や野砲の攻撃によって何とかしのいでいるという有様で、この、T34の出現によるドイツ軍の一種の恐慌状態は「T34ショック」と呼ばれた。

この「T34ショック」を早急に克服するため、開発が急がれたのが次期主力戦車を期待されたY号戦車パンターである。パンター戦車の特徴的な点は、それまでの箱型の無骨なドイツ軍戦車と異なり、傾斜装甲で構成されたスマートなデザインである。これは同じく傾斜装甲で構成されているT34の影響が大きい。パンターの主砲には70口径長の75mm砲が搭載された。この長い砲は、貫通力に関して、ティーガーTの88mm砲よりも強力だと分析されている。装甲に関しては前面が80mm側面が40mmであり、傾斜した前面装甲は実質的には110mmの厚みがあった。エンジンはマイバッハの700馬力ガソリンエンジンを積み、当時のドイツ軍戦車の中では比較的軽快な機動力を持っていた。

1941年末に本格的にスタートしたパンターの開発は、ダイムラー・ベンツMAN社に命じられ、両社は翌42年5月に試作車両を提出、検討の結果MAN社の案が採用された。量産の命令は「翌年5月までに250両のパンターを生産すること」であったが、量産のための試作車の製作にてこずり、結局完全な試作車が完成したのは1943年の1月であった。それからわずか4ヶ月の間に数百両のパンターをそろえなければならなかったのである。加えて、夏に予定されていたクルスクの戦いにパンターが間に合うようにするため、さらに生産が急がれた

この、急ピッチな開発と生産が、パンターの初期におけるさまざまなトラブルを招いてしまったことはいうまでもない。1943年7月のクルスク戦に投入されたパンターは、いたるところで故障を起こし、その真価をまったく発揮できなかった。ある部隊では、200両装備していたパンターのうち、クルスク戦の第一日の終了後、稼動できるものは50両程度に過ぎないという有様であった。

このような初期不良に悩まされたパンターであったが、徐々に改良が加えられ、パンターG型に至ってその完成度は十分なものになったのである。攻撃力・防御力・機動力がバランスよく備わった本車は、連合軍から非常に厄介な相手とみなされた。ドイツの戦車兵エルンスト・バルクマンがたった一両のパンターをもってアメリカ軍戦車数十両を破壊し、戦線の崩壊を防いだという伝説もあるほどだ。

パンター戦車の弱点は、先ほど挙げた機械的信頼の問題以外にもいくつかある。それは1両の生産にかかるコストが大きいということ、車体が大きく、特に面積の広く装甲の薄い側面が弱いということである。パンターの重量は、約45トンであるが、これは他国の主力戦車と比べた場合、10トン近く重い。重い戦車ほど基本的に強いのだが、1両でも多くの戦車がほしいはずのドイツ軍ならば、もっと生産性を重視するべきであったと思う。

とはいえ、パンターは第二次大戦の中で、もっとも優秀な戦車のうちに入ることは間違いない。戦後、ドイツ軍が開発したレオパルドTにパンターの面影を見ることができるのは、やはりその設計の優秀さが通用するからではないのではなかろうか。実は、パンターもレオパルドも訳は「」である。そういった意味でも、まだドイツ軍の中にはパンターが生きているのかもしれない。


パンター戦車性能諸元(G型)
全長:    8.86m
車体長:   6.88m
全幅:    3.43m
全高:    2.98m
全備重量: 44.8t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL230P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 177km
武装:    70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 (82発)
        7.92mm機関銃MG34×2 (4,200発)
装甲厚:   16〜110mm
posted by 戦車男 at 12:19| 東京 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 戦車図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめましてーさいきん見させて頂いてます。
戦車の実写が多く掲載されてますが、これって外国の博物館に足を運ばれたものでしょうか?
Posted by D坂 at 2005年10月09日 02:00
D坂様

はじめまして!コメントありがとうございます。このページに掲載している写真は、実際に博物館で撮ったものや、知人からもらったもの、ネット上の写真などを利用しています。
Posted by 戦車男 at 2005年10月10日 19:47
「X号戦車、公称パンター」開発の過程で國防軍側の要求を容れる度に膨れて行った感の強い機材ですが、(実は歩兵支援戦車だったと言う)T34のもたらした精神的危機が其程に大きかったとも言えます。余談ですが、当方が我が五式中戦車「チリ車」の多過ぎる面構成を整理し、最低限の線で繋いだ所パンターの姿に近くなり驚きました。
Posted by 調達本部 at 2005年11月22日 00:10
調達本部さん

コメントありがとうございます!確かにパンターはその開発過程を見ても、T34に対する危機感というものが強く現れているように思います。

>当方が我が五式中戦車「チリ車」の多過ぎる面構成
>を整理し、最低限の線で繋いだ所パンターの姿に近
>くなり驚きました。

やはりパンターは洗練された戦車ということなのでしょうか。傾斜装甲を極めた戦車としてはJS3が私としてはイチオシです。
Posted by 戦車男 at 2005年11月24日 15:01
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