2005年09月02日

T34中戦車(ソ連・1941年)

T34.jpg
スマートな戦車である。当時のどの国の戦車と比べても先進性を感じさせるデザインだ。角度のついた装甲版で構成された車体、鋳造方式の砲塔、当時の標準(37mm・50mm)を大きく上回る76mmの大口径砲、踏破性の高い幅広の履帯(キャタピラ)、燃費がよく、どのような燃料にも対応する500馬力ディーゼルエンジン。当然ながら性能も一流で、攻撃力・機動力・防御力のいずれもバランスよく持ち合わせていた。

1941年の独ソ戦勃発によりソ連に侵攻したドイツは、T34に直面したが、これにまともに対抗する兵器を持ち合わせていなかった。陸軍の37mm対戦車砲は、「陸軍御用達のドアノッカー」とあだ名されるようにまでなってしまった。ドイツ軍の主力戦車である3号戦車J型4号戦車D型も性能的に明らかにT34に劣っていた。

対抗手段のないドイツ軍は、T34を「鬼戦車」と呼び、地雷や集束手榴弾による肉薄攻撃、高射砲や大型や砲による砲撃によって戦うしかなく、この現象は「T34ショック」とまで呼ばれることとなった。そして、この戦車に対抗する形で開発されたのが、有名なティーガー戦車パンサー戦車である。3号戦車や4号戦車など既存の戦車も大幅に改良が施され、装甲を増加し、大砲はより大きな物へと載せかえられた。

なかなか新型戦車の開発が進まない技術部に対して、一時はT34のまったくのコピーを生産しろといったこともあったほどである。電撃戦の生みの親、ハインツ・グデーリアンは、撃破されたT34を見て、これこそが理想の戦車だと語ったこともある。

このように、ドイツをはじめとする世界各国に衝撃を与えたT34であるが、この戦車にも初期の段階ではいくつかの弱点があった。その一つは、砲塔が小さくて、戦車長が砲手も兼ねなければならないことであった。そのために周辺警戒が手薄になったし、砲弾の装填速度も各国の戦車に比べると遅かった。また、初期のモデルでは無線の搭載が進んでおらず、戦車の集団的運用には困難があった。独ソ戦初期において、ドイツ軍がなんとかT34に対抗できたのもこの点に負うところが多い。ソ連軍はT34を少数で逐次投入したために、有効な打撃力とすることができなかったのである。あと、もう一点問題を述べるとすれば、T34は粗製乱造がひどかったことである。エンジンが動かないとか砲が割れたとかそういった深刻なことではなかったが、強化ガラスに気泡が浮いて、よく前が見えなかったり、がさつな作りの変速機のため、金槌で叩かなければギアチェンジができないほど硬かったりした

しかしこのような弱点も、1943年に開発されたT34/85(85mm砲搭載の新型砲塔タイプ。従来は76mm砲)の出現によって克服された。大型砲塔の搭載により、乗員が4名から1名増えて5名になり、戦車長が砲手の任務から解放された。その他の細かい弱点も、この改良によって大部分が解決され、第二次世界大戦一の傑作戦車となったのである。

その証拠に、T34は第二次世界大戦のみならず、朝鮮戦争、中東戦争、ベトナム戦争、ユーゴ紛争など、共産圏の標準的兵器として使われ続けたのである。そして一部の後進国だけではあるが、今現在も現役で就役しているT34があるというから驚きである。それほどまでにバランスの取れた優れた戦車なのである。

T34中戦車(1942年型)

全長:    6.75m
車体長:   5.92m
全幅:    3.00m
全高:    2.45m
全備重量: 30.0t
乗員:    4名
エンジン:  V-2-34 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 500hp/1,800rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 280km
武装:    41.5口径76.2mm戦車砲F-34×1 (100発)
        7.62mm機関銃DT×2 (2,394発)
装甲厚:   15〜70mm
posted by 戦車男 at 15:35| 東京 🌁| Comment(9) | TrackBack(1) | 戦車図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
旧ソ連の戦車は殆ど知らないのですが、丈夫(というより頑丈)で長持ちな戦車なのですね。
カラシニコフ銃に通じるものを感じさせます。とかく丈夫、故障しても直しやすい、子供でも扱える……子供に戦車は扱えませんが。

ガッチリ作るソ連製もある意味好きだったりします(^^;)。
Posted by araza at 2005年09月02日 17:10
いつもありがとうございます!

ソ連の兵器全般については、arazaさんのご指摘する通り、ともかく構造が単純で故障しにくく、生産が容易という共通項があります。

その理由は、ともかく質よりは量を重視する戦略と、言語が違い雑多な民族からなる上、概して無教養な国民が扱える兵器が要求されたからでしょう。

そういった意味で、私もソ連の兵器の持つ頑丈さや質実剛健なところに魅力を感じることもあります。
Posted by 戦車男 at 2005年09月02日 19:14
はじめまして。
TBありがとうございます。
各記事、楽しく拝見しました。
技術的な事も含め、いろいろと参考になります。
小説「戦車男」のほうも楽しみにしています。
これからも、よろしくお願いします。
Posted by totsu-ken at 2005年09月04日 09:00
戦車男さん、私はロスケは嫌いでも、T34戦車は好きです。戦車映画の中で、一番多く登場するのがT34で、例をあげれば「ヨーロッパの解放のクルスク大戦車戦〜ベルリン攻防戦」、「スターリングラード」などがあり、日本の戦争映画では五味川純平原作「戦争と人間〜第3部完結編」のノモンハンの戦闘シーンにT34が出て来ます。戦車男さんに聞きたいのですが、21世紀になった今もT34が現役で配備している国はどこですか?教えて下さい。
Posted by 十津川健也 at 2005年09月06日 19:59
十津川さん

ご存知かもしれませんが、映画「プライベートライアン」で出てきたティーガー戦車もT34の改造です。キャタピラと転輪を見ていただければ一目瞭然かと思います。

さて、現在もT34を配備している国、というご質問ですが、申し訳ありませんが、現時点(2005年現在)で確証のある情報ではありません。

私が「T34は今も現役」と書いたのは、いくつかの雑誌(確かミリタリー雑誌『Jグランド』に「ボスニアではT34を現役配備」と書いてあったのを覚えています)、ネットなどで散見したからです。1990年代のユーゴ紛争でT34が使用されたのは確実です。また、旧ソ連陣営に入ったアフリカ諸国や北朝鮮も、その貧弱な装備を補うために、T34を保存しておいていると聞いています。

T34はまだいくつかの国で利用されているという可能性は濃厚だと私は考えていますが、いずれも、現在に関しては推測の域を出ません。今後調査して判明次第報告します。
Posted by 戦車男 at 2005年09月08日 00:49
トラックバックのアドレスがあったのでお邪魔しましたが、現役のT-34は、攻撃用でなくトラクターみたいな使われ方をしていると思います。
いちおう、アフガンのT-34の写真を、私のブログ内につけておきました。
Posted by mrozone at 2005年09月08日 08:31
T34は工場から直接戦場まで運ばれた逸話が残ってますが、その輸送には少年兵なんかが鎖で繋がれて運転させられた話もあるようです。
Posted by ざんぶろんぞ at 2005年09月26日 17:37
ざんぶろんぞ様

コメントありがとうございます!

T34やKB1が工場から戦場に直行したという話は聞いたことがあります。ほかにも、1941年末、ドイツ軍がモスクワまで後わずかに迫ったとき、スターリンが士気高揚のため、赤の広場でパレードをしたのですが、そのパレードをした部隊が、赤の広場を行軍した後、そのまま戦場まで直行したという話も残っています(笑)

ロシア人はなかなか頑強で、ドイツ軍攻撃下のスターリングラードやレニングラードでも工場生産は継続されて疎開とかはなかったみたいですね。
Posted by 戦車男 at 2005年09月29日 13:46
Elliott
Posted by Moulton at 2005年12月27日 02:39
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アフガン カブル の現役らしきT-34
Excerpt: 一応現役のT-34 トラクター代わり。
Weblog: 飛行機 戦闘機 戦車 軍艦
Tracked: 2005-09-08 08:29
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