2005年12月15日

ハーフトラックA

調達本部さん、十津川さんより興味深いコメントがあったので、それに答えつつ、前回書ききれなかった点を補って今回の記事にしたいと思う。

まず、主なハーフトラック利用国であるドイツとアメリカの比較をしてみたい。垂直面で構成された簡素なM3と、ハンドルに連動してキャタピラの制動がなされる、凝った構造のドイツのハーフトラックでは、確かに「質」と運用の思想に大きな違いがあったと思う。

アメリカの場合は、当初は弾薬輸送、後に兵員輸送を目的として開発された。そのため、ある程度の装甲と不整地行動力をハーフトラックに求めたであろうが、とにかく機甲師団、歩兵師団にかかわらず配備するため、大量にそろえることが前提であった。それゆえ性能が凡庸でも、単純な構造で生産性の高い車両に仕上げたのであると思う。

ドイツの場合は、調達本部さんのコメントの指摘にあるように、機甲師団の兵員輸送や弾薬運搬、砲の牽引を目的に開発されたため、戦車などの追随可能な、路外での不整地機動力が求められた。それゆえ、性能向上のため、エンジン・操縦装置・キャタピラ(路上での行動力向上のためゴムパッドがつけられた)・車体構造が複雑になったのだろう。もちろん、効率を考えないドイツ的な機械へのこ「こだわり」が影響したのはいうまでもないだろう。これは、ティーガー戦車マウス80cm列車砲グスタフなどに見られるし、ポルシェ博士などはその権化である。

アメリカの場合、大量生産の方針はおおむね成功を収めたといえるが、やはり路外での機動力、そして市街戦などでの防御力が不足で問題視された。それゆえ戦後に、前線での兵員輸送は防御力・機動力の高い密閉式のキャタピラ車になり、後方での輸送は軽快な装輪車になったのであろう。中途半端なハーフトラックに両方の任務を行わせるより、それぞれの任務に特化した車両を使う方が効率的である。

ドイツの場合は、機甲師団とその他の部隊とでハーフトラックの種類が分かれていたといえるが、いずれも構造が複雑で量産に向かない。慢性的な輸送力不足であったことを考えれば、性能が高くて複雑な構造の車両を使うよりも、とにかく数をそろえることが重要であったのではないだろうか。特に輸送車両の場合は、戦闘に直接関係ないので、数が一番優先されるはずだ。例えば10両の97式中戦車は1両の90式戦車に勝つことはできないが、10両のジープは1両のハマーに輸送量で勝つことができるのだ。
posted by 戦車男 at 16:48| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
キャタピラ車はオフロードでの走破性に優れ、装輪車はオンロードでの機動力が優れていると良く聞きます。くだらない質問かも知れませんが、どうしてキャタピラ車は装輪車に比べて(オンロードで)遅いのでしょうか?ホイールの大きさですか(またはキャタピラ車の仕組み)?もしも、キャタピラ車で機動力(スピード)を上げるとしたら、どのような手段があるのでしょう(エンジンの出力をあげる以外に)?
Posted by 流浪人 at 2005年12月28日 21:35
流浪人さん

返信遅くなって申し訳ありません。

キャタピラがなぜ遅いかということですが、第一に挙げられるのは、タイヤに比べて、進むために回転させるのに非常に負担が大きいという点にあるでしょう。それは、キャタピラ自身がタイヤよりもはるかに重いということ、路面に対する抵抗が同様にタイヤより大きいことが要因です。

もうひとつは、高速走行の使用に向かないということです。キャタピラはばらばらのパーツを組み合わせた走行装置ですから、強い力を加えれば分解します。上で見たように、普通に走行する分でもタイヤ車より大きな負担がかかるわけですから高速走行ではより大きな負担が考えられ、すなわち故障の蓋然性が高くなります。加えて、高速走行時は遠心力が働き、大きな円を描いて回転するキャタピラ車は、エネルギーのロスが大きく非効率です。これはパイクのチェーン駆動車にも見られる現象です。

キャタピラ車もタイヤ車と同じスピードでキャタピラを回転させれば、理論的には同じスピードが得られます。そのためにはエンジン出力をあげ、車体・キャタピラを軽量化し、路面との摩擦を少なくなるようにキャタピラの形状を考えればいいでしょう。ただし、そこまでして速度にこだわるのならタイヤ車にすればいいという話です。

結局は使用目的と効率の問題で、タイヤ車とキャタピラ車の使い分けがなされるということでしょう。
Posted by 戦車男 at 2006年01月11日 14:53
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