2005年12月13日

ハーフトラック

(ドイツ・8トンハーフトラック)
i-breda.jpg
近代戦はある一面を捉えれば「輸送の戦い」である。近代戦に使われるさまざまな兵器を支えるためには、さまざまな物資が必要である。たとえば戦車の場合には、燃料・オイル・主砲弾・機関銃の弾・整備のための各種部品などが恒常的に必要である。第二次世界大戦では、日本軍は海上輸送をアメリカ潜水艦・航空機に断絶させられ極度な物資不足・食糧難に直面した。ドイツ軍は1941年のバルバロッサ作戦に際して電撃的な進撃を見せたが、補給が間に合わないがためにモスクワを前にして一ヶ月足踏みをしなければならなかった。以上のような例に見られるように、「補給」とは近代戦において非常に重要な要素であることに違いない。

今回の記事では、前線において砲弾や人員の輸送に従事した「ハーフトラック」という、現在では見られない第二次世界大戦固有の車両についてみてみたいと思う。

ハーフトラックとは、車体前部がタイヤ、後部がキャタピラの折衷車両である。不整地での機動力を向上させつつ、ある程度の高速走行能力を持たせ、さらにキャタピラ車より安く製作するという構想で開発された。私がはじめて「ハーフトラック」を知ったとき、私は「半分トラック(貨物車)」という意味だと思っていた。しかし、「トラック(無限軌道・キャタピラ)」という意味なので、皆さんご存知とは思うがご注意を。

ハーフトラックを主に採用した国はドイツとアメリカである。ドイツではSd.Kfz250やSd.Kfz251、2トン、8トン、18トンの各種サイズのハーフトラックが有名である。バイクとキャタピラをくっつけたケッテンクラートという面白いう車両もある。(ちなみに、18トンハーフトラックはティーガー戦車の牽引に使われた)総生産数は25000両程度といわれている。アメリカはM2、M3ハーフトラックが主で約60000両が生産され、ソ連にもかなりの数がレンドリースで提供された。

戦場での評価は非常に高く、他のキャタピラ車である戦車や自走砲などとともに行動が可能な、不整地での追随性が評価されている。加えて牽引力の高さから、ハーフトラックは大砲の牽引車としての役割も果たしてきた。さらにいえば、ハーフトラックは各種特殊車両のベースとしても活用された。高射砲を積んだ対空車両や、ロケットや野砲、迫撃砲を積んだ火力支援車両、対戦車砲を積んだ対戦車車両、偵察車両、戦闘指揮車両などさまざまな派生車両が作られてきた。
(アメリカ・M3ハーフトラック)
M3-2.jpg

このように隆盛を極めたハーフトラックではあったが、戦後急激に衰退し、今では絶滅してしまった(と思う)。その要因としては2つの点が考えられる。装輪車、キャタピラ車の性能がともに向上(特にキャタピラ車)し、その両者のうまみを採ったハーフトラックの存在意義が薄れたという点。もうひとつは、歩兵に対する防御向上が要求から、前線での歩兵輸送用の車両がキャタピラ車に切り替えられたということである。

初めてハーフトラックを知ったとき、私は非常に効率的な車両であるなと感心したものなのだが、結局はつぎはぎの中途半端な車両だったのだろうか。なんとなく納得できないものがある。
(ドイツ・ケッテンクラート)
M3-2.jpg

posted by 戦車男 at 12:12| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>ハーフトラック(ド=ヴィークル)
文字通り「接地部分の内で半分が無限軌道である車輛」ですが、亜米利加合衆国と其処から武器調達して勝った、或いは叩かれ負かされて一旦身ぐるみ剥がれたにも関わらず、勝った国の都合で中古武器をあてがわれる(自然左傾化した衆愚から「反動野郎共」と石を投げられる)羽目になった諸国が用いた車輛と、独逸国防軍が死滅する寸前迄頼った其れとでは先祖は共に仏シトロエン=ケグレス特種自動車であるものの、飽く迄自動車である前者に比べ後者は装軌車の変種となっている感があります。
構造から見ても、前者(M3系統)は自動貨車が泥濘地に入る際現地で装着していた輪履帯を固定式としたに過ぎませんが(それ故踏破性は六輪貨車より若干まし程度で、幅の広い壕に落ちれば自力では出られません)、後者(1t〜18t)は計画の初段階より友軍の装軌車即ち戦車に棍随(こんずい=何処までも付いて行く)し、且つ自動車並の簡便な操縦性をも要求され、装軌車の鼻先に舵取用の車輪(旧式電気機関車の先台車の様なもの)を付けた結果あの形になったと言える気がします。たとえ構造が複雑怪奇であれ、装軌車特有の「制動しつつ駆動させる」操縦法を教育する手間を省き、支援車輌部隊を膨らませられる点は再軍備が思うに任せず焦る国防軍をして、非常に大きな利点であったとも思えます。
余談ですが「ケッテンクラート(前輪付き装軌スクーターか?)」は前輪の有る無しで路上速度が数キロ違ったそうです。無論前輪付きの方が速度が出ました。
Posted by 調達本部 at 2005年12月13日 21:54
戦車男さん、こんばんは。 ハーフトラックはドイツとアメリカが有名ですが、旧日本軍も1式半装軌装甲兵車といドイツのハノマークのパクリみたいなハーフトラックがあったのをご存じですか?1式半装軌装甲兵車はドイツのハノマーク(Sd.Kfz.251)を参考に開発されました。ですが、大戦後半の船舶、航空機優先の生産状態の中で、戦車以上に生産が遅れ、実戦参加は戦車第2師団に少数が配備されたのみで、実戦には参加していない様です。現在の陸自も似た様なもの(これが海洋国家の宿命なのか?)戦後は、米軍からM3パーソナリキャリヤ、その派生型であるM15、M16自走高射機関砲が自衛隊に貸与されましたが、日本の慢性的な装甲車不足もあったせいかM3は1980年前半まで現役にあり、M15にあたっては、私が自衛隊を除隊した後の1980年代後半まで使用されてました。私も現役の頃、実車を見ました。ですが、さすがに前大戦からの骨董品なのでパレードの時にエンストするなどかなり悩まされていました。 ハーフトラックは現在、現役で使用している軍はどの国にも存在しませんが、映画のロケに使用されるぐらいですね。私は今、「バンド・オブ・ブラザーズ」というアメリカで放映されたビデオを見ているのですが、この作品にもハノマークハーフトラックが出て来ます。
Posted by 十津川健也 at 2005年12月15日 01:35
戦車男さん、こんばんは。 ハーフトラックはドイツとアメリカが有名ですが、旧日本軍も1式半装軌装甲兵車といドイツのハノマークのパクリみたいなハーフトラックがあったのをご存じですか?1式半装軌装甲兵車はドイツのハノマーク(Sd.Kfz.251)を参考に開発されました。ですが、大戦後半の船舶、航空機優先の生産状態の中で、戦車以上に生産が遅れ、実戦参加は戦車第2師団に少数が配備されたのみで、実戦には参加していない様です。現在の陸自も似た様なもの(これが海洋国家の宿命なのか?)戦後は、米軍からM3パーソナリキャリヤ、その派生型であるM15、M16自走高射機関砲が自衛隊に貸与されましたが、日本の慢性的な装甲車不足もあったせいかM3は1980年前半まで現役にあり、M15にあたっては、私が自衛隊を除隊した後の1980年代後半まで使用されてました。私も現役の頃、実車を見ました。ですが、さすがに前大戦からの骨董品なのでパレードの時にエンストするなどかなり悩まされていました。 ハーフトラックは現在、現役で使用している軍はどの国にも存在しませんが、映画のロケに使用されるぐらいですね。私は今、「バンド・オブ・ブラザーズ」
Posted by 十津川健也 at 2005年12月15日 01:38
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